この度、2023年9月3日朝刊の「見る 思う」に文章を寄せさせていただきました。
今回寄せた文章は、なぜトランスジェンダーをはじめLGBTQ+のリアルな姿を可視化すべく情報発信をするのかという問いに答える形で記させていただいたものになります。
振り返れば、私が自身のYoutubeチャンネルにて、トランスジェンダー当事者の方にアポを取り、特にこれといったエンタメ的な要素を入れるでもなく、実際にどんなことを考え、どんな夢を持ち、一方どんな困難と共存しながら生きているのかを、カメラに向かって喋っていただくという、ただただシンプルなインタビュー動画を発信するというところからスタートしました。
はじめは、決して前向きに受け止められているというわけではありませんでした。「トランスジェンダーのリアル」というネーミングに、センスがないとか、当事者の可視化なんかして当事者を苦しめるなんてけしからんなど厳しい声もいただきました。
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一方で、トランスジェンダー特に女性に対する誹謗中傷が激しさを増していたSNSの姿に心を痛めて少しでも状況を改善したいと、インタビューに応じてくださる方も多数いらっしゃいました。決して幸先の良い走りだしではありませんでしたが、コツコツ積み上げていきながら、少しずつ様々な方の目にとまりといった感じで今に至ります。
そんな中で、さまざまな出会いがありました。
その中の一つに遠藤まめたさんはじめ、「トランスジェンダーのリアル」製作委員会の方々にお声がけいただけた事です。
メンバーとして冊子の製作に携わらせていただいた事が、「トランスジェンダーのリアル」を急展開させることになりました。
トランスジェンダーのリアルを伝えるべく冊子を作ろうと製作委員会が立ち上がり、クラウドファンディングを呼びかけ、ありがたい事にあっという間に製作可能な状況を作る事ができました。
ご協力くださった皆様には感謝しております。おかげさまで、2023年8月現在増刷を重ねて第10段の増刷と配布が行われました。
ご協力くださいました皆様、本当にありがとうございました。
冊子という形で、しっかりとした用語解説やさらに広い当事者のリアルを盛り込んだ形で、行政や教育機関等にトランスジェンダーのリアルを届けることができました。
そして、今夏には「鏡をのぞけば~押された背中~」の制作チームと繋がり、上映に漕ぎ着け、冊子とは違う角度から、まだトランスジェンダーのリアルを届けられていなかった方々にも届けられたのかなと感じています。
とはいえ、こういった活動はやったから終わりではなく、積み重ねていくことが何よりも大事だと思います。
一度伝えたとしても、人によっては受け止められるけども、ある人によってはタイミングではないかもしれないし、時間の経過とともに薄れていく事だってあります。
だから、何度だって同じことを伝え続けなければならないと思います。
もう何回も聞いたよって何回でも聞きながら、情報として落とし込み、アップデートさせていくものです。
ただでさえ、人口のほぼ全てを占めるトランスジェンダーではない9割の人たちが紡ぐ言葉と情報で埋め尽くされているこの世の中に、トランスジェンダーの人たちが必要とする言葉や情報は、相変わらずまだまだ少なく、当事者はいまだにそれらを手探りで探しながら生きぬいていかなければなりません。
しかも、手に入れた情報や言葉がその人にとって適切なものかどうか、自身の直感とその時に持ち合わせる知識で持って分別しなければならないのです。
トランスジェンダーを扱う情報は、YoutubeなどSNSには少なくない数あるでしょう。
中には、ある角度から見たら有益な情報もあります。
しかし、そうでないものもあります。
多様な当事者の在り方に対して、一つの価値観にスポットライトを当てた情報は時に、それに該当しない当事者の心を抉ることになってしまうので、情報の取捨選択がとても難しかったりします。
また、生きづらさを抱える当事者の心の隙を狙っている人も、残念ながら、当事者の近くにいないとは言い切れません。
多くの若い当事者にとってそのような環境が安全で素晴らしいものだとは到底思えません。
そのためにも、オープンでクリアなトランスジェンダー当事者の情報というものはさらに作っていく必要があると考えています。
勿論、それは私個人だけの話というわけではありません。
今後も、さまざまな人たちと出会い、手を組んで、トランスジェンダー当事者にとって必要な言葉や情報を、オープンでクリアな形で可視化していこうと思います。
これまで関わってくださった皆様、そして引き続き関わってくださっている皆様、本当にありがとうございます。
そして、これから関わる皆様にも、引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
いろどりスマイル
代表 河上リサ
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